2010年11月08日

あとがきに代えて

 この10月11日に「あから2010」が清水市代女流王将と対局し同王将に勝利した、との報道がありました。「あから2010」は、現今のコンピュータ将棋界における第一人者達の総力を結集して作られた、コンピュータとソフトウェアの結合した将棋を指すシステムです。

 

 コンピュータ将棋のソフト開発の歴史は35年に及びますが、近年急速に強くなったと聞いています。2006年には、保木邦仁(ほきくにひと)さんの作成したBonanzaというコンピュータソフトが第16回世界コンピュータ将棋選手権に初出場で優勝しました。2007年にはこのBonanzaをさらに強化したシステムが渡辺明竜王と平手で対戦し、今一歩のところまで渡辺竜王を追いつめました。

 

 我が国のコンピュータ学術・技術の中心的な学会である情報処理学会は創設50周年を迎えました。このことを祝賀する意味を込めて、清水女流王将とコンピュータ将棋「あから2010」との対局が実現したようです。「あから2010」では、国内四強というべき四つのソフトの合議制によって指し手を決めたとの事です。Bonanzaも四強の一つで、保木さんは合議システムの構成にも重要な貢献をされたようです。

 

 私の購読している新聞も10月12日の夕刊に「将棋ソフト プロに初勝利」の見出しで対局を写真入りで報道し、翌日の朝刊一面のコラムでも、「コンピューターがプロを退けたのは始めてという」と紹介していました。

 

 保木さんは1975年生まれの化学の研究者です。気鋭の若手研究者と思われます。カナダで化学者としての研究生活を送りながら、Bonanzaの開発をされたとのことです。天は二物を与えずと言いますが、保木さんは、二物、あるいはそれ以上が天から与えられている偉才と思われます。

 

 二日にわたる新聞報道を読んだときに自然に浮かんだのは、このような将棋ソフトの開発者のことにも触れて欲しいと言う思いでした。

 

 人とコンピュータの対戦ととらえますが、コンピュータとそのソフトは人が作ります。人と対等、あるいは、それを越えるような働きをするソフトを作るのは、「人」です。短絡した表現ですが、人と「人」との対戦なのです。

 

 このような「人」は、また傑出した才をもち、驚異的な集中力があり、忍耐強く作業をする人です。その困難な道を開くセレンディピティに巡り会って、始めてBonanzaのような画期的なソフトが誕生するのだと私は思います。

 

 保木さんはこの10月に電気通信大学の先端領域教育研究センターに着任されました。将棋ソフトを始めとするゲームソフトの研究開発を当面の研究課題にして行かれるとのことです。

 

(この文を書くに際して、以下の新聞、雑誌、ウェブ情報などを参照しました。

   朝日新聞(東京本社夕刊)2010年10月12日号4版 10ページ。

   朝日新聞(東京本社朝刊)2010年10月13日号14版 1ページ。

  情報処理学会学会誌「情報処理」 第51巻第8号(2010年8月号)

   ミニ特集 コンピュータ将棋の不遜な挑戦。

  保木邦仁、ウィキペディア。

  駒桜|女流棋士会ファンクラブ、 ホームページ。

  電気通信大学先端領域教育研究センター、 ホームページ。) 

 



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